DIRECTORY 声優名鑑
柴田 秀勝 (しばた ひでかつ)
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- 所属
- RME
- 誕生日
- 3月25日
- 出身地
- 東京都
- 血液型
- O型
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- 趣味・特技・資格
- 乗馬、ゴルフ、旅行(海外50カ国)
- 主な出演作
- TV『タイガーマスクW』ミスターX、『マジンガーZ』あしゅら男爵、『アパッチ野球軍』網走、『鋼の錬金術師』キング・ブラッドレイ、『NARUTO』三代目火影、『ONE PIECE』モンキー・D・ドラゴン、『水戸黄門』ナレーション(3代目)、映画『天気の子』神主
MAGAZINE
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連載「声優道」第1回
柴田秀勝の声優道自身が運営するプロダクション『RME』でも多くの声優を指導されている名優・柴田秀勝さんが語る“声優道”を、3回に分けてお送りします!柴田秀勝 しばたひでかつ……3月25日生まれ。青二プロダクション所属。主な出演作はアニメ『マジンガーZ』あしゅら男爵、『NARUTO-ナルト-』の3代目火影ほか多数。テレビ『水戸黄門』ナレーション。ドキュメンタリー映画のナレーションで文部大臣賞、通商産業大臣賞受賞。① 声優になりたい人たちへ~はじめに~はじまりはタ行を克服したい一心で私は小さい頃からタ行がうまく言えなかったんです。いつも「タタタッ」って言葉がつまっちゃてね……。麻布中学にバス通学をしていた時も大変でした。昔は乗車すると、首から鞄をぶら下げた車掌さんに行き先を伝えて、切符を買うという規則があってね。帰りは麻布から乗るでしょ、家は虎ノ門。でもタ行が出てこないから「虎ノ門まで」って言えない。次は田村町。これまたダメで、結局、毎日新橋まで行って二駅歩いて戻るんですよ(笑)。そんなふうだからタ行を克服したくて、中学のときから演劇部に入部したんです。そこで先生がおっしゃるには「歌えば、言葉はつかえない。歌舞伎のセリフは歌うようなリズムがあるから、演劇が好きなら歌舞伎を勉強できる日本大学芸術学部に行ってみたら……」ということで日芸に入りました。『タイガーマスク』ミスターXが声優のスタート大学卒業後は歌舞伎界へ進むつもりでしたが、就職先に決めていた関西歌舞伎が倒産しテレビの世界へ。『熱血カクタス』という番組に出て、白い馬にまたがりギターを背負い、ヒーローをやっていたんですよ(笑)。それでも、セリフにタ行があると苦労しましたね。 しばらくすると青二プロダクションの現会長から「声専門のプロダクションを始めたいから、いっそのこと声優の専門家にならんか」と言われてね。声優・柴田秀勝の誕生です。 まずは『タイガーマスク』ミスターXの話がきました。決まり文句は「フッフッフッ、タイガーめ」ですよ。またタ行(笑)。でもね、ふくみ笑いからいくタ行だからリズムにのれたというか、とにかく初めてタ行を克服できました。それからは精神的にも余裕が出たんじゃないかな、どんな役がきても大丈夫。今は平気でナレーションまでやるようになっちゃいましたからね。40年たってから、歌舞伎の経験が活きた数年前には『水戸黄門』のオーディションを受けて、ナレーションをやることになりました。あの七五調の語りは、40年前に歌舞伎でさんざんやってきたもの。だからこの業界で七五調を読ませたら俺の右に出るやつはいないといった自惚れもありました。でも40年もたってから役立つとは、夢にも思いませんでしたよ。役者は、体験することすべてに無駄になることは何ひとつないんです。みなさんも、声優の専門学校や養成所に入る前にやるべき心構えとトレーニングがたくさんあります。次回はそれをお教えしましょう 。②声優になるには ~声優学校や養成所に入る前に必要な“役者の仕入れ”~あなたはもっていますか? 何かをつかもうとする気持ち声優になるために、声優の専門学校や養成所へ通う方はたくさんいらっしゃいますが、卒業すれば誰しもがプロになれるというものではありません。声優スクールや養成所はあくまでも演技のレッスンをするためのヒントを得たり、アドバイスを求めに行くところです。そこで優秀な成績を残した人だけが、プロへの「第一歩」を踏み出すことができるのです。ではその第一歩を踏み出すためにはどうすればいいのでしょうか? それは前にもお話したとおり、声優スクールや養成所に入る前にきちんとした心構えと、トレーニングを積んでおくことです。それではその具体的な内容とは……。「柴田が来たらあれもこれも聞いてやろう」という心構え声優、つまり役者を目指している読者の皆さんは、声優の専門書や俳優の専門書をもっていますか? あるいは落語や講談、浪曲、歌舞伎などを聞きに行ったことはありますか? 演芸場に行かずとも、CDショップにたくさん並んでいます。たとえば、モデルを目指している人なら、本屋さんでファッション雑誌の一冊ぐらいは買うでしょう。ならば皆さんは「私はこうして声優になった」という類の書を、わかろうと、わかるまいと、手に取る「心構え」ぐらいはあってもいいのではないでしょうか。また声優の仕事は日本語を使う「話芸者」といっても過言ではありません。伝統的な日本語の話芸を知るべきです。役者にだって、仕入れが必要なのです。形のない引き出しと云う仕入れがね。 特別講師として、ある養成所を訪れたことがあります。授業の一番最初に「柴田秀勝といいますが、私のことはご存じですか?」と問いかけると、数人の人は手をあげたけれど、知らないという人もいました。なぜ「柴田秀勝とは何者なんだ」と調べてこないのでしょうか? なぜ「柴田が来たらあれも聞いてみよう、これも聞いてみよう」と思わないのでしょうか? 専門書を読もうとしない人も、落語や講談に耳を傾けない人も同じです。知るための、つかむための心のハングリーさをもってください。何かを志す人の目の輝きは、必ずや教えてくれる先生方の心を動かすはずです。俳優であるということの意識を常にもち続けるそれからもう一つ。今日から「俺は声優だ」「私は声優だ」というイメージをもって生活してください。よく仲間と「役者の成功とは何だろう」という話をしますが、結論は感性があるか?ということになります。想像力を豊かにして俳優としての感性を磨かなければなりません。感性はその人の努力によって、差こそあれ育て、育むことができるものです。たとえば田中さんだったら「私は俳優・田中だ」で、エレベーターのボタンを押す、飯を食う。俳優であるということの意識を常にもち続けることなのです。こうした意識のアンテナを張ることで、日常生活の中で体験したことや小説を読んで感じたことを、人間のもつ五感にしっかりと記憶させることなのです。これを「五感の記憶」と云い、「役者の引き出し」になるのです。俳優を志す者にとっては日常生活で見る・聞く全てが修行と考えてください。将来あなたが「好み」で集めた「引き出し」から引き出して演じるとき、それはあなたしかもっていない個性に生まれ変わっているでしょう。リズムを体で覚えるためのトレーニングが身近にたくさん皆さんはまず、できるだけたくさんのお友達を作っておしゃべりになってください。その時の注意点は口の形をハッキリ作っておしゃべりをする努力をしてみて下さい。口の周りの筋肉がすごく柔らかくなったイメージが生まれてきます。それから、俳優が必ず通る道、「外郎(ういろう)売(うり)」をそらんじて言えるぐらいの努力はしてほしいですね。そしてそれができたら次の課題、「外郎売」の「、」と「。」をのぞいて書き写し、何枚もコピーをとって、自分が一番気持ちがいいと思うところに「、」と「。」を打ってごらんなさい。そもそも文章上の「、」と「。」は目読(もくどく)する上で誤解を生まないよう便宜上付けられてあるもので、声優による「、」と「。」は間(ま)であり、リズムを生みます。私にも柴田節というのがあるように、どこにブレスをもってくるか、どこに間をもってくるかでその人の感性、その人の個性が表現されます。ある意味、声優は作曲家でもあるわけですね。リズムを体で覚えるためにスポーツを、カラオケを、日舞を、洋舞を、なんにでもトライしてみましょう。そのとき忘れてはならないのは、覚えるという意識のアンテナのイメージです。演じることが好きかどうか診断する簡単なトレーニング法たくさんのトレーニング法を紹介してきましたが、最後に一つ、これだけは必ず挑戦してください。新聞のコラムのようなものを、毎日目読ではなくて声に出して、音読するのです。それが声優のトレーニング。大事なのは、音読を通して本当に演じることが好きなのか、それとも声優に憧れているだけなのか、気づくことです。毎日音読できたら、それは演じることが好きなのだから、胸を張って学校や養成所を受験してごらんなさい。③声優になるには~声優? 誰でもなれるはずです!~声優は、俳優の仕事の一部分。心を演じる、人間を演じる俳優になれ前回は専門学校、養成所に入る前の心構えとトレーニングについて紹介しましたが、今回は現場で私が感じていることを率直にお話しましょう。 ここ10年ぐらい仕事の現場で感じることですが、若い人たちの演技はどうしても底が浅いような気がしてなりません。大変な苦労をしてせっかくのヒーロー、ヒロインを獲得したのに次へのステップアップにならない。つまり使い捨てになってしまう人達がいます。本来なら1本レギュラーをとったら、それを足がかりにして一歩一歩階段を昇っていかなければならないはずなのにね。 声優になるために、声優の勉強をして、声優になっちゃった、という人達も多い現在、映像に声をあてることだけはむしろ僕らよりうまい人がいます。でも残念ながら、心を演じていない、人間を演じきれていない。つまり「らしく」演じる類型芝居ってやつですね。昔から「歌は語れ、セリフは歌え」と言うけれど、「歌い手がこんなにすごい芝居をするのか」って驚かされるケースがたくさんあるじゃないですか。あれは歌詞で心を語って曲にのせるという、役者の基本が身に付いているからだと思います。 役者の芝居を優先して絵を直す。こんなことだってあり得るんです。もちろん、セリフの寸法は守るように努力はします。しかしセリフは「間」の芸術ともいわれるように、「間」と「リズム」はセリフの基本ですから。そうなった場合は演出家が「イエス! 芝居優先、絵を直します」といったことだって可能なんです。あなたが持つ「五感の記憶」を大切に保存今はアニメーションの絵の技術がどんどんよくなっているのだから、演じる側も心して演じなければなりません。声優は、俳優の仕事の一部であることを、忘れないでおいてください。 さて、そこでみなさんにぜひ実行してもらいたいのは、文学にふれる、小説をたくさん読むことです。こんな経験ありませんか。物語の中のいち人物にあなた自身がなりきって読んでいる。小説には必ず状況説明がありますよね。「暗い空に向かって煙草の煙をはきだした……」という具合に。主人公が今どんな心理状況に置かれているのかを想像させてくれます。これを俳優という「心」で読むことは想像力を豊かにし、そしてあなたのもつ「五感の記憶」を大切に保管することで、あなたが将来演じるときにそれを再現させることができるはずです。これを「役者の引き出し」といいます。「行間を読め」―これは台本に書かれていない部分をどう読むか、どう演じるかということで、演技の幅も奥行きも違ってきます。あなたの隠れた感性と想像力を養うためにも、たくさんの「本」を読んでください。 「五感の記憶」が大事というのは、そういうことなんですね。つまり、前回もお話したように「自分は俳優だ」という心をもっていれば、小説で体験したことを「五感の記憶」の「引き出しに」ちゃんとしまっておけるはずです。声優として成功する秘訣は「人間付き合い」と「器材付き合い」この世界は、人間が人間を使います。うまい、へたもあるけれど、好みの人間を採用することも多い。だから寡黙な人、人付き合いが苦手な人は向かないようですね。実は社交術も、役者として成功するひとつの要素。だからといってプロデューサーやマネージャーにわざとらしいお世辞を言った覚えはありませんよ。心の持ち方一つで変わってくるものがあるということです。それから我々の商売は、器材との関係も重要です。相手は一生マイクですから、声優になろうという人はまず録音器材を手に入れること。数千円のものから始めればいいでしょう。自分の声を繰り返し聞いて、耳をよくし、欠点なり長所なりを発見するのです。我が家はもうスタジオ状態ですよ(笑)、次から次へと買い換えていきましたから。1週間に1回は録音し、それを寝る前に聞く、車に乗ったら聞く。自分の声に惚れているわけじゃない、欠点を見出すために何度でも聞くのです。 今ではアナウンスブースを備えた「東高円寺スタジオ」まで作って、毎週、RME所属の若手声優達等と一緒にトレーニングに励んでいます 。好きだからこそ努力もできるさて、皆さんの足を引っ張る人間がいるとしたら……? それは親族です。専門スクールや養成所には通っているけれど、その努力が見えない、ひたむきさが見えない。つまり家でトレーニングをしていない。すると「いつまでやっているんだ、人並な仕事につけ」となります。 プロとは、生やさしいものではありません。では、選ばれた人間しかプロになれないのかといったら、そうじゃない。誰にでもチャンスはあります。そして常に、自分が役者であることを自覚し精進すること。あなたが本当に演じることが好きなら、きっとやってのけるでしょう。 最後に一言。「好きだからこそ努力もできる。我慢もできる。」
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